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7月, 2023の投稿を表示しています

卓上マスクスタンド

三年ほど前に家族の要望で作った、卓上マスクスタンドです。 ヒノキです。形状的、構造的な強度の確認や木材の動きの観察などの目的も兼ねて作りました。収縮を考えれば、柱の部分は柾目で取りたかったところなのですが、その辺にあった材料で作ったのでいたし方ありません。動きを観察するのには、むしろ好都合かもしれません。 仕上げにはウレタンとオイル混合の浸透性のものが余っていたので、それを使用しました。質感はあまり良くないです。色の薄い木材にはあまり向いていないようです。 マスクを吊るすには充分というより過剰な強度です。柱は反りやねじれが出ている様子もなく、ほぞも別にゆるんでいないようです。 一番関心があったのは台座部分の木材がどの程度動くかということでした。 全くと言っていいほど動きは出ていません。物は小さいですが、白木のままだったら若干動いていたかもしれません。

木材は縮む

我が家のとある場所にある引き戸枠の留め部分です。 一応言っておきますと、少なくとも当時私は関与できる年齢ではありませんでした。 無塗装です。樹種はラワンです。正面に来ているのは柾目です。多分完成時は隙間無しで作られていたのだと思います。経年による収縮で、45°だったものが少し鋭角になった結果、枠の内角に隙間が出来ています。放射方向(半径方向)の収縮を見ていることになります。家は築45年くらいだと思います。我が家は多くの場所でこの現象が見られます。 木材は短期的には伸縮しますが、長い年月で見ると収縮します。

掛け時計の裏面

『意作屋』の木の掛け時計の裏側です。 部品取り付け部分に、長い年月を経過した場合の収縮を見込んだ隙間をとってあります。 つり下げ金具の周囲、金具の取付部分をふさぐフタの脇、ムーブメントの周囲、それから表側のムーブメントの軸が通る穴、それぞれにゆとりを持たせてあります。接線方向に広くなっています。 フタの木目の向きと本体の木目の向きがそろっていないのが気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、そろえてしまうとフタの強度に問題が生じるため、このようにしてあります。 なお、このように繊維の方向を交錯させて接着した場合に心配される割れは発生しにくいように接着箇所を制限してあります。 <関連記事> 木の掛け時計

手工具

私はCAD/CAMやCNCを製作に使用しますが、仕上げ工程や治具を作る際など様々な場面で大工道具をはじめとする手工具が必須になっています。 サッと出してサッと使え、手加減が容易に効き、用途によっては機械や電動工具よりも迅速に仕事をこなします。 手工具は別な面でも有用です。手工具を使って木材を加工する事は木材の被削材としての性質を理解する最短ルートだと思います。手工具を使って得た理解は機械加工をする場合にも大いに助けとなります。 恐らく手工具を使うのに最も大事な技術は研ぎです。言うまでもなく、良く研げていれば道具はその性能を発揮し、使い手の負担は軽くなり、切削面も綺麗になります。 自分で刃を研げば替刃の必要性が少なくなります。切れ味が落ちてきたらすぐ研げばよく、何百、何千回と使えます。 機械やホーニングガイドなどを使わずに手だけで研ぐ事に慣れると、手早く研げるようになり、わずらわしさも感じなくなると思います。数十秒から数分で研げるようになります。私は早いほうではないので、たいてい数分かかりますが苦にはなりません。

最初にやったこと

木を使った製作をしようと思い立った時、最初にやったことといえば、何十年も放置していた(使った記憶も無い)自分の鉋と鑿を物置から出してくることでした。 それまでに製造業の経験はありました。木工品がどのように時間経過や環境の影響を受けるかは身の回りに少なからず実例があるため、ある程度予測はつきました。ですが木の材料としての性質については全くもって知識が不足していましたので、直接手で加工して肌感覚を身に着けよう思ったわけです。 いきなり使ってみました。鑿はともかく問題は鉋です。使ってみたら結構悲惨でした。刃は研いでない、台は狂ってる、そもそも最初の仕込みすらしていなかったのですから、まともに使えるはずもありませんでした。 この小鉋が一応使えるようになるまでには、なかなか手間取りましたが、その過程で得た経験は他の手工具を使用する為にも非常に役に立つものでした。 この小鉋。はじめから刃は短く台も薄いですが、青紙鋼(鍛接)です。値札シールには確か3900円くらいの値段が打ってありました。軽さがかえって長所になり取り回しが良いです。 私にとって最も使用頻度の高い道具の一つになっています。

ワックス

掛け時計の場合、ワックスは汚れの付着軽減と最終的な質感の調整を主な目的として塗っています。 ワックスもいくつか試してみたのですが、どうも都合よくありませんでした。多くの場合、油の酸化・酸敗の問題があります。油の問題が無い物も一つありましたが、それは摩擦抵抗がかなりあり、汚れ軽減目的には都合が悪そうでしたし感触も滑らかではありませんでした。 結局、自分で作る事にしました。色々と配合を変えて試し、都合の良い物ができました。 余計な色付きはありません。 持ちを改善するために少し硬めに調整しましたが、それでいて塗り伸ばしやすいです。 原料は全て食品添加物グレードの物を使っているので安全です。 通常の条件下で酸化を起こさない原料を使用しています。 自然発火の心配がないため、塗布に使用したウエスなどの処分が簡単です。 臭くないです。塗っている時は少し美味しそうな匂いがします。塗布後ほぼ無臭になります。後から悪臭を生じる事もありません。 塗ってから1年ほど窓のある部屋に放置しておいた試験片を見ても黄変はありません。 とき皿に少量のワックスを取ってラップをかけ、窓際に置いて2ヶ月ほど観察していますが何も変化はありません。

シェラック

掛け時計の仕上げを決めるにあたって、なるべく着色されず、湿気・乾燥に対する保護力があり、質感も良いものが欲しいと思いました。一般的によく使われるものをいくつか試してみましたが、 いまひとつしっくりこないと思いました。 現在仕上げに使用されることはあまりないですが、かつては一般的な仕上げだったシェラックを試してみることにしました。 結果、これは使うしかないと思いました。 塗膜が薄いうえ非常に透明感があります。質感も生理的に自然さを感じるもので文句なしでした。 臭くないです。塗っている時はなんだか美味しそうな匂いがします。塗装後匂いはほぼ無くなります。 造膜塗料ですので保護も問題ありません。 完全乾燥後の靭性も思った以上にあります。 塗装してから3年ほど窓のある部屋に放置しておいた試験片を見ても黄変はありません。 弱点もあります。 シェラックの塗膜はアルコールやアルカリに弱いです。溶けます。 ニスの使用期限が短く(通常、生成後6ヶ月以内)保管温度にも注意が必要です。自分でニスを作って管理する必要があります。 もちろんアルコール消毒はできません。 消毒剤ではありませんがアルコールの含まれていない『CPスーパーマルチガードスプレー』というものが売られています。使用してみましたが、少なくとも短期的にはシェラックの塗膜に悪影響は見られませんでした。長期的にはわかりません。 特に推奨はしませんが、どうしても何かしたい場合は使用してもいいかもしれません。掛け時計に直接吹き付けたりはしないでください。なお使用した場合、ワックスの持続期間が短くなる可能性はあります。

コートするかコートしないか

木材の動きの観察目的を兼ねて作ったまな板です。ヒノキの無垢一枚板です。もちろん白木です。 使い始めてから2年半ほど経過したと思います。毎日朝昼晩使い、その度ジャブジャブ洗って拭かずに陰干ししてます。 木表側を表としています。作る際に木表はやや凸面に、木裏はやや凹面に鉋で削っています。 ヒノキは比較的水に強く、狂いも少ないとされますが動かないという事ではありません。使っていくうちに反ってきて平面に近くなる様子が観察できるかと思っていたのですが、隙間は作った時からほとんど変わっていないようです。反りはほとんど進行していないようです。 木口にはヒビが入ってきています。まだ裂け始めてはいません。濡らしているといっても表面だけですが影響は出ています。保管・使用している場所が台所ということも影響があるでしょう。 木材の動きにあまり目くじらを立てなくてもよい(使用目的によりけり)と思っていますが、湿潤・乾燥を繰り返せばそれなりの影響は出てきます。季節・気候や使用状況によって動きます。長い年月とともに収縮もしてきます。 製品によって仕上げの選択は変わりますが、木材は動くということを念頭に置いています。塗装を施す場合は、保護(木材の動きの軽減や、摩耗などの軽減)と美観を整える事が主な目的です。 私は主にシェラックを使っていますが、場合によってはウレタンを使うこともありえます。物によってはワックスや不乾性油のみという場合もあれば、白木ということもありえます。

試作

木の掛け時計の試作品の中でも初期のものです。2x4材を接いで材料にしています。 事前に問題点の洗い出しをするには試作するのが最も良い方法です。…と言うよりもしっかり試作・試用・修正の繰り返しをしないで製品化するのは論外だと思っています。 問題点の中には製造上の問題も含まれます。2x4材のような柔らかい針葉樹を使って試作すると切削工程の問題点が現れやすいです。少しでも無理のある削り方をするとすぐに欠陥が出ます。それも後の工程でカバーできない大きなものになりやすいです。 写真の試作品も仕上げ加工でカバーしきれなかった欠けが随所にあります。その後切削工程を見直して問題は修正しました。 私が製品の材料に使っているような広葉樹は寛容で、ろくに考えずに削っても一見問題が無い事も結構あります。ですが木の性質に沿わない切削方法を選択していた場合、後で不良品の出る可能性が少なからずあります。 被削材として問題になりやすい性質は針葉樹も広葉樹も共通しています。繊維や管を束ねたような構造をしているという事に配慮する必要があります。 欠陥の出やすい材を使って切削工程の検証・修正をしておくと本番で失敗する可能性を減らすのに大いに役立つと思っています。

木の掛け時計

木の掛け時計を作ろうと思ったのは、そもそも自分が欲しかったからです。ちなみに、実際に製作しているものは、自分だけが使う前提で考えていたものとくらべると、使い勝手の改善など変更が加えてあります。 現在販売している時計には手間のかかる形状をあえて採用しています。私は機械や電動工具で仕上げた時の曲面のダレや入隅・出隅の歪みが嫌いです。ですので仕上げ加工は基本的に手作業でやらざるを得ないでしょう。委託して作ってもらった場合、自分の望むような仕上がりにするのは難しいと思います。 木の時計が欲しいと思ったのはちょうど自分で作るオリジナル製品の素材を何にしようかと考えていた頃でした。もともと木を使った製品作りをしたいという願望はずっとありました。素材に木を選択すれば、木の時計だって自分で作れるじゃないかと、最終的には割と単純な理由で決めたのでした。 <関連記事> 掛け時計の裏面

始まり

枠組みの中で仕事をしていると、多少コストがかかってもこうしたほうが嬉しいユーザーもいるだろうと思っても諦めざるを得ない事は多々あります。自分でオリジナル製品を作れば枠組みの外でやれるわけで、ずっとやりたいと思っていました。 最初は製造委託による器物・雑貨の量産を考えました。しかしそれでは結局コスト競争の土俵に乗ってしまうのは避けられそうもありません。コスト優先ではない物を作りたかったのに矛盾してしまいます。 自分で製作しなければならないと思いました。素材の候補は金属・木・革・布・土あたりでしょう。これまでの経験を活かせそうな物となると金属と木に絞られました。金属の加工は一応仕事でも経験していますが、木材を使いたい、特に無垢材を使いたいという欲求はずっとありました。その時自分が欲しかった物と重なりましたし、待っていたところで木を使う機会は来ないとも思いました。 念入りに試作してブラッシュアップした物を作りたいので、基本的に一点ものを作ることは考えませんでした。作家による作品ではなく、家内制手工業による製品だと思っていただいたほうがよいでしょう。 一つ一つの製品は試作と試用を繰り返しながら、何十回、何百回でも納得のいくまで修正を施したうえで製作しています。 CAD/CAMで形状データと加工データを作成します。 CNCで形状を削り出します。 機械のみでは意匠面の満足な仕上げは期待できません。 手作業で仕上げていきます。 手間と時間がかかります。